私立中学受験には世帯年収いくら必要?月々の教育費用を調査

私立中学、学費のリアル事情 経済負担を軽くするには?

「子どもを中学受験させたいけれど、年収1,000万以上でないと無理なの?」という不安なお問合せのお声、近年増えてきています。

確かに私立中学校の受験と聞くと「お金持ち」のイメージが強いという人も多いのかもしれませんね。しかし、そのイメージは今すぐポイしちゃいましょう。実際には「年収を問わず子どもを私立中学に通わせている」という家庭、多いんですよ。

志望校を決める目安として、基本的な毎月の学費は、できるだけ早い段階で知っておきたいという保護者の皆様に向けて、この記事では、子どもが私立中学校を目指す場合に必要な費用と世帯年収について詳しく解説します。

経済的負担を少しでも軽減するための制度についても詳しく紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

年収がいくらなら私立中学校に通わせられる?

私立中学に通う子供を持つ世帯の年間収入

私立中学受験にあたって、世帯年収1,000万円は「最低ボーダーライン」だという話を聞くことがあります。実際に、年収1,000万円以上の家庭の子どもばかりが私立中学校に通っているのでしょうか?

平成28年度の「子供の学習費調査 」によると、年収1,000万円以上の世帯は51.9%と私立中学に子どもを通わせる世帯の半数以上を占めます。ほぼ半数というのは、意外と割合が少ない印象です。

年収1,000万円未満の世帯も48.1%と半数近くにのぼるため、必ずしも「年収1,000万円」でなくても私立中学校へ通わせることが可能だとわかります。

実際のところ、月々の家計費のやりくりも大きな要因といえるかもしれません。世帯収入だけなく住宅ローンの有無や子どもの数によっても、月々の家計費から教育費として捻出できる金額は異なるはずです。例えば家族所有のマンションや一軒家に住んでいれば、住宅ローンや家賃の支払いは発生せず、その分を教育費に使えます。

学習塾に入塾するなど中学受験の準備を始めたら、ヒートアップしてしまい途中で冷静になるのはなかなか難しいことを知っておきましょう。子どもが頑張っている様子を見ると、無理をしても応援したくなります。

そこで中学受験の先には高校・大学進学を控えていることや、老後資金の準備を始める必要も考慮しながら、教育費の使い方について事前に綿密な計画を立てることが大切です。

家電製品の故障や冠婚葬祭など突然の大きな出費に備え、貯蓄できる状態をキープすることも考えましょう。

では次に、月々にいくら捻出できれば私立中学校へ通わせられるのか見ていきます。

私立中学への進学は月々12万円の学費を捻出できることが条件

娘の卒業を祝う家族の記念写真

平成30年度の「子供の学習費調査」によると、私立中学校へ通わせるために年間にかかった学習費の総額は平均で140万6,433円でした。月々に換算すると、約12万円となります。

学習費の内訳は、次のとおりです。

教育費名金額
学校教育費1,071,438円
学校給食費3,731円
学校外活動費331,264円
合計1,406,433円

「学校教育費」「学校給食費」「学校外活動費」とは、文部科学省が子どもの学習費調査で活用している学習費の項目を定義した用語です。

それぞれ、次のような費用が含まれています。

  • 学校教育費:授業料、修学旅行・遠足費、生徒会、寄付金、図書費、学用品費、通学費、制服費など
  • 学校給食費:給食にかかる費用
  • 学校外活動費:学習塾費・家庭教師費など補助学習費、芸術文化活動など学校外活動費、スポーツ・レクリエーション活動の月謝など

中学受験を考える上で重要なのは、1人の子どものために月々約12万円の学費を家計費から捻出できるかどうかという点です。

なお前回の調査と比べて、私立中学校にかかる学習費の総額は6.0%増加しています。近年、私立中学校の学習費は増加傾向にあるため、月々12万円より若干の支出増があることも想定しておくことが大切です。

また中学受験にかかる費用を算出する際に、学習塾の費用や受験料も考慮する必要があります。毎月かかる通塾費用だけでなく、季節講習・特別講習の費用も忘れないようにしましょう。

中学受験では「七五三」という考え方をベースに併願を計画することが多く、高額な受験料がかかります。「七五三」とは「7校出願、5校受験、3校合格」のことです。入試を受けた際の印象で、志望校への気持ちが変わることも想定して、複数の選択肢から選べるように準備しておきましょう。

【私立中学校の面接試験対策はこちら】

私立中学校の受験では、学力試験はもちろんながら、面接試験も重要視されています。実際の私立中学受験の面接試験でよく出題される質問や、その回答例を確認しながら対策を解説します。

盲点!「私立高校授業料実質無償化」で高校よりも中学時代の学費のほうが高い

2020年4月から、私立高校授業料実質無料化がスタートしたことをご存知でしょうか?国が「高等学校等就学支援」と呼ばれる制度の改正を行い、世帯の年収に応じて、最大年額39万6,000円まで支給されるというものです。

支援の対象となる世帯の年収は子どもの数や両親が共働きかどうかで、以下のとおり異なります。

(私立高校・全日制の場合)

 

子どもの数

支給額11万8,800円

支給額39万6,000円

両親のうち一方が働いている場合

子2人(高校生・高校生)

~約950万円

~約640万円

子2人(大学生・高校生)

~約960万円

~約650万円

両親が共働きの場合

子2人(高校生・中学生以下)

~約1,030万円

~約660万円

子2人(高校生・高校生)

~約1,070万円

~約720万円

子2人(大学生・高校生)

~約1,090万円

~約740万円

私立高校に通う学費は国からの補助が手厚くなったため、結果として自己負担が少なくなります。つまり私立中学に通わせる学費の負担が、1番高くなるのです。逆にいえば中学受験をためらっていた家庭も、私立高校に通わせる負担が減ることを見越して、私立中学の通学にお金を使いやすくなったといえるでしょう。

平成30年度の「子供の学習費調査」によると、私立高等学校に通わせるために年間にかかった学習費の総額は平均で96万9,911円でした。月々に換算すると約8万円強の支出となります。

学習費の内訳は次のとおりです。

教育費名金額
学校教育費719,051円
学校給食費
学校外活動費250,860円
合計969,911円

最大年額39万6,000円の「高等学校等就学支援」を月々に換算すると、3万3,000円に相当します。最大年額を受給できれば、学習費の自己負担額は、月々4万7,000円です。

さらに都道府県でも、授業料軽減助成制度を実施している場合があります。国の「高等学校等就学支援金」に上乗せしたり、対象の世帯を広げたりして助成するものです。助成を受けるためには、申請する必要があります。

なお「年収1,000万円世帯」は高所得家庭とみなされ、国や地方自治体による支援や助成の対象外となるケースが多いことを知っておきましょう。

私立高校を検討している人は、都道府県が実施する独自の授業料軽減助成制度についてチェックしてみてください。 経済的な負担を軽減する助成制度を利用し、毎月の家計費を見直しすれば、月々4万7,000円はなんとかなりそうですね。

家庭の経済的負担を少しでも少なくする方法

1つだけ点灯する電球

「高等学校等就学支援」など高校時代の学費を支援する助成制度は充実してきましたが、一方で私立中学校へ通学させる場合の経済的負担は悩みの種といえるでしょう。

そこで検討したいのが、家庭の経済的負担を少しでも少なくする次の方法です。

  • 各校の奨学金・特待生制度を利用する
  • 助成金を申請する

ではそれぞれについて、見ていきましょう。

学校ごとに異なるが奨学金・特待生制度を利用する

私立中学校が設けている独自の「奨学金制度」には、大きく3種類の意味合いがあります。

  • 保護者が失職するなど家計が急変し、経済的に援助が必要な生徒の授業料を免除する(授与)
  • 経済的に支援が必要な生徒に奨学金の無利子貸し付けを行う(貸与)
  • 学業および人物優秀な生徒の授業料を免除(特待生と同じ扱い)

私立中学校ごとに奨学金の定義が異なるので、よく確認するようにしましょう。

なお「特待生制度」を「奨学金制度」とは別枠で設けている私立中学校もあります。成績に自信がある人は、特待生制度にねらいを定めて中学受験に取り組むのも良い方法です。

特待生として免除される範囲は私立中学校ごとに異なり、例えば次のような免除が行われています。

  • 初年度の授業料免除(入学試験の結果による)
  • 1年間の授業料免除
  • 入学金と3年間の授業料免除

継続して優秀な成績を収めるプレッシャーはありますが、得られる経済的な恩恵も大きいので頑張りがいがありますね。

注意したいのは、入学試験の出願時に申請などが必要になる場合がある点です。ただし制度は存在しても、インターネット上で情報が公開されていない場合もあります。募集要項を読んだり直接学校に問い合わせたりして、奨学金や特待生制度の有無について調べるようにしましょう。

助成金を申請する

実施期間は2021年度までと限定されていますが、義務教育期間に私立中学校を選択している理由や家庭の経済状況を把握する目的で、助成事業が実施されています。

次の2つの基準を満たす世帯が対象です。

  • 年収400万円未満
  • 資産保有額600万円以下

年間最大10万円の助成金を学校が代理受領して、授業料が減額されるという仕組みです。なお支援を受けるためには、文部科学省が実施する調査に協力する必要があります。

予算内での実証事業という性格から、基準を満たしていても支援の対象に選ばれないケースもあるようです。せっかくですから、基準を満たしている場合には申請してみてはいかがでしょう。

家族で話し合いをして中学受験を進めよう

「お金がないから無理!」とあきらめてしまう前に、まずは「なにができるのか」を検討してみるのも一つの方法。子どもが「やりたい」ということを諦めさせるのは親としても胸が痛むもの。まずは、学校生活に必要な金額と家計費を算出してシミュレーションして「どんな工夫をすればよいのか」「全く無理なのかどうか」を検討してみましょう。

「私立中学向けの補助金・支援金についてもっと詳しく知りたい!」という方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。今回解説したことに加えて、中学校の学費負担を減らす方法についても詳しく紹介しています。