「子どもを中学受験させたいが公立か私立か迷う」「私立の方が設備が整ってそう」
近年このように、感染症の影響も相まって、私立中学校の受験を検討する家庭が増えています。というのも私立中学校は、公立の中学校にはない、生徒1人ひとりに対する丁寧な対応や、学校それぞれの特色ある教育内容に魅力があるのです。
もちろん、デメリットも存在するので、安易に決めてしまうのは良くありません。そこで今回は、私立中学校の5つのメリットと3つのデメリットについて詳しく解説しています。私立中学校に向く子どもの特徴なども合わせて紹介しています。私立受験を決めてしまう前に、まずは「私立中学校にはどんな魅力があるのか」ということをよく理解しておきましょう。
私立中学校は教育理念や教育方針にそれぞれ特徴がある
私立中学校は公立中学校と違って国が定めるカリキュラムに縛られることがなく、学校ごとに異なる理念や方針のもと、特色のある教育を積極的に行っています。そのため「国際教育に重点を置いている」「部活動に力を入れているなど」学校ごとのカラーがはっきりしているのが特徴です。学習内容だけでなく、学校行事などもオリジナリティに富む学校が多く見受けられます。
教員に関しても、学校ごとの理念や方針に共感して働く人が多く、良好なチームワークのもと指導にあたっています。公立中学校のような教員の異動がないため、その学校で培われた教育ノウハウが代々引き継がれており、その点も私立中学各校の特色を形作っています。
私立中学校を受験・通学する5つのメリット
私立中学校を受験し、通学することには、主に次のようなメリットがあります。
- 家庭の方針に合う学校を選択できる
- 生徒の学力レベルが揃っている
- 施設や設備が充実している
- 多様な体験ができる
- 高校・大学受験の負担を軽減できる
それぞれ、詳しくみていきましょう。
メリット1.家庭の方針に合う学校を選択できる
私立中学校最大の特徴は、公立学校のように画一的な教育ではなく、学校ごとの方針や理念のもとで特色ある教育を実施していること。「生徒の個性を大事にする学校」「国際教育に力を入れている学校」「学習進度の速さが特色の学校」「部活動の強化に注力する学校」など、カラーは学校によって実にさまざまです。
私立中学校を受験する際には多種多様な学校のなかから、理念や方針、校風が家庭の方針に合致する学校を選べるため、学校と連携を取りながら子どもの教育を進めやすくなるでしょう。
メリット2.生徒の学力レベルが揃っている
各学校が実施する入学試験によって、入学時点で生徒の学力が一定以上のレベルに揃っています。そのレベルに合わせて授業が行われるため、学校によっては文部科学省が定める学習内容よりも難度の高い応用学習に取り組めます。また、中学の段階で大学入試を見据えたカリキュラムを組む学校も多く、そのような学校では難関大学への進学率の高さが特色となっています。
また私立中学校へは、学校ごとの特色や教育方針に賛同する生徒が入学する場合がほとんどです。そのため、進学校なら学習意欲が高い生徒が集まり、部活動に力を入れている学校なら部活動で上を目指したい生徒が集まるでしょう。生徒間の意識が揃いやすく、互いに切磋琢磨し合える環境が整いやすいのも、私立中学校の特徴だといえます。
メリット3.施設や設備が充実している
私立中学校は学校の理念や教育方針に沿って主体的な学校経営を行っているため、公立中学校よりも施設や設備の充実を図りやすいというメリットがあります。近年では、学びの多様化や生徒の快適性向上を目指して、施設・設備を充実させる私立中学校が増えているようです。パソコンなどの機器を豊富に備えるだけでなく、ICT(情報通信技術)などの最先端技術を導入することで授業体系の多様化に対応するなど、各校が工夫を凝らして学習環境の整備に努めています。
また、高校や大学に併設された私立中学校の場合は、図書館などの設備を高校・大学と共有しているケースも少なくありません。
メリット4.多様な体験ができる
私立中学校はカリキュラムや学習環境の自由度が高いため、ユニークな学校行事や海外交流、地域や企業と連携した企画など、個性的な学習内容やイベントが多い傾向にあります。また、公立中学校と比べて練習設備や備品などを豊富に整備しやすいことから、部活動の種類も多岐にわたります。
生徒の興味関心に応じて多くの機会や選択肢が用意されていることに加えて、学校側からの生徒一人ひとりへのサポートが手厚い点も特徴。柔軟に個性や才能を伸ばしていくことができます。
メリット5.高校・大学受験の負担を軽減できる
私立中学校は基本的に、中高一貫です。そのため、高校受験を減ることなく6年間かけて落ち着いて学習や部活動に取り組めます。受験勉強に追われる必要がないため、校外活動などやりたいことにも時間を割けるでしょう。
高校進学だけでなく、内部進学制度を利用して高校からエスカレーター式に大学に進学できる場合や、系列大学への入学優遇制度が利用できる場合もあります。また、大学受験を見据えた学習が早期にスタートする私立中学校もあるため、高校生になってから大学受験対策に取り組むのと比べて、受験勉強の負担を分散することが可能です。
【私立中学校の面接試験対策はこちら】
私立中学校の受験では、学力試験はもちろんながら、面接試験も重要視されています。実際の私立中学受験の面接試験でよく出題される質問や、その回答例を確認しながら対策を解説します。
私立中学校を受験・通学するデメリット
私立中学校を受験して通学することにはデメリットもあります。デメリットについてもきちんと知ったうえで、受験するかしないかを判断しましょう。
主なデメリットは次のようなものです。
- 入学試験の難易度が高い
- 費用がかかる
- 多様な人と触れる機会が少ない
それぞれ詳しくみていきましょう。
デメリット1.入学試験の難易度が高い
私立中学校、とくに難関と呼ばれる学校では、小学校の授業で学習する内容とは全く異なる、難易度の高い問題が出題されます。小学校のテストで良い成績を残していても、私立中学校の受験問題は全く解けないということも珍しくありません。そのため、中学受験対策に取り組もうとしてつまずき、勉強に対する自信を失ってしまったり、中学受験を終えていわゆる「燃え尽き」状態に陥ったりという弊害が起こるケースもあります。
また、受験の倍率も高く、多くの私立中学校が2~3倍以上、なかには10倍を超える学校もあります。塾に通うなどして必死に受験対策に取り組んでも、一定数の子どもは試験に落ちてしまうのです。小学生はまだまだ精神的に未熟のため、模試の合格判定は問題ないのに、極度の緊張や動揺などの突発的な要素で受験当日に失敗してしまうパターンも想定しなければなりません。
デメリット2.費用がかかる
私立中学校は、公立中学校と比べてかかる費用が高額です。第一に、公立中学校のように授業料が無償ではありません。また、設備費などの諸経費や修学旅行費用などの費用も、公立中学校と比べると多くかります。遠方の学校に通う場合には、交通費や寮費が必要なこともあります。
文部科学省が実施した「平成30年度子供の学習費調査」によると、私立中学校で1年間にかかる子ども1人あたりの学校教育費は約107万円。公立中学校の約14万円と比べると7倍以上もかかる計算となります。
また中学受験する場合、受験対策のための進学塾に通うのが一般的です。塾の月謝に加えて、模試の費用や受験料も必要となるため、私立中学校受験を決めてから入学するまでにも、まとまった費用が必要です。
デメリット3.多様な人と触れる機会が少ない
私立中学校は、入学試験によって同じようなレベルの生徒が集まるのが一般的です。レベルが揃っていることで足並みを揃えやすいというメリットはあります。しかし、よりレベルの高い人と接して学習の方法を模倣するような機会には乏しいといえます。家庭環境や素行レベルの格差もあまりないため、公立中学校のように全く異なる環境で育った人や、生活態度に難があるような人と接する機会もあまりないでしょう。
将来的に社会に出れば、多種多様な環境で育ち、さまざまな考え方を持つ人と接していかなければなりません。そういった意味では、私立中学校へ入学しエスカレーター式に進学をすることで、コミュニケーション面の経験が乏しいまま社会に出ることになる可能性があります。
私立中学校に向く子の特徴
私立中学校に向いているのは、主に次のような子どもです。
- しっかり自己管理ができる
- 進学に目的意識がある
私立中学校の受験をクリアするには、遊びなどの楽しいことを我慢して、受験勉強に取り組まなければなりません。そのため、誘惑に負けずに勉強を頑張れる、自己管理能力の高い子が、中学受験には向いているといえます。また、進学したのち、高校受験なしで6年間を過ごすパターンが多いため、中だるみしないためにも自己管理力は必要です。
また、子ども自身がその私立中学校になぜ行きたいのかという目的意識を持っていることも大切です。明確な目的意識があるほうが、つらい受験勉強にも真剣に取り組めます。入学後も燃え尽きることなく、目標に向かって頑張れるでしょう。
私立中学校のメリット・デメリット両方を把握しよう
私立中学校のメリット・デメリットが分かりましたね。まずは「どんな学校を目指したいのか」「自分に合った学校」をよく家庭内で話し合い、私立中学校への受験を検討してみることをおすすめします。
中学受験の学校選びの際は、いろいろな学校の情報収集が必要です。お子様に合った中学校選びの5つのポイントと、学校選びのコツを詳しく知りたいという方は、ぜひ以下のブログを参考にしてください。