都立の公立中高一貫校と私立中にかかる学費を比較!授業料の違いは?

中高一貫の教育方針 学費も含め最良の選択を

「中学受験を目指したいけれど、私立中と公立中高一貫校ではどちらがいいの?」

近年、このようなお悩みを持つ読者のみなさまから沢山のお問い合わせをいただくようになりました。

というのも、これまでは中学受験といえば「私立中学校」というイメージがありましたが、文科省が公立中高一貫教育制度を導入した頃から設置数も増え、中学・高校の6年間を同じ学校で過ごしたいという人が年々増加しているのです。

しかし、実際のところ「学費にはどれくらいのちがいがあるのか」と気になっている人も多いことでしょう。

そこでこの記事では、私立中と公立中高一貫校では、学費にどれくらいの違いがあるのか、メリットや導入の目的についても詳しく解説します。

ぜひ最後までご覧ください。

公立中高一貫校の中学3年間の学費はいくら?

コインと植物

中学受験にあたって、保護者も生徒も気になるのは「お金」の問題でしょう。ここでは公立中高一貫校に通った場合に、どの程度の学費がかかるのか目安をご紹介します。

私立中学校に通う費用は公立中学校に通う場合の約3倍だという調査結果もでているので、比較のためにぜひ参考にしてください。

公立中高一貫校の中学3年間の学費

平成30年度子どもの学習費調査の結果から、公立中学校3年間の学費を算出しました。

 1年間3年間
学校教育費138,961円416,883円
学校給食費42,945円128,835円
学校外活動費306,491円919,473円
合計488,397円1,465,191円

進学する公立中学校によって必要な学費は多かったり少なかったりするものの、概ね3年間で150万円かかることがわかります。

なお公立中高一貫校の前期課程と、一般的な公立中学校に通った場合にかかる費用の違いは、海外修学旅行や海外語学研修の積立金です。そのため公立中高一貫校の前期課程(中学の3年間)に通うほうが、同じ公立でも学費が少し高めの傾向にあります。

入学式までにかかるお金もある

公立中高一貫校に無事合格してから、入学式までにかかる金額はざっと13万円ほどになります。東京都立両国高等学校附属中学校の事例を参考に、必要なお金の内訳を見てみましょう。

項目金額
制服(男子)40,150円
制服(女子)46,035円
上履き・体育館履き6,010円
体育着13,640円
校章バッヂ550円
通学用バッグ4,900円
入学一時金60,000円
合計男子:125,250円 女子:131,135円
(令和2度入学生実費額)

女子の制服の価格は、男子より少し高めです。入学一時金は、入学金ではありません。教材費と給食費の一部のことです。

制服や通学用バッグなどの費用が半分以上を占めており、一時的に支払う金額が多く見えます。しかし通学時の服やカバンを自分で用意することを考えると、コスパが高いといえるでしょう。

なお都立小石川中等教育学校では、入学式までにかかる金額をおよそ11万円としています。同じ都立でも、各校ごとにかかる費用が異なることを知っておきましょう。

私立中学校の学費と比較

文部科学省が発表した「平成30年度子どもの学習費調査の結果」から、公立中学校と私立中学校に通った場合に、1年間にかかる学費を比較してみましょう。

 公立私立
学校教育費138,961円1,071,438円
学校給食費42,945円3,731円
学校外活動費306,491円331,264円
合計488,397円1,406,433円
  • 公立中学校1年間分の学費総額:488,397円
  • 私立中学校1年間分の学費総額:1,406,433円

私立中学校の場合授業料が高いため、「学校教育費」は公立中学校と比べて約7.7倍です。私立中学校においては、学校教育費の4割にあたる42万8,574円が授業料となります。

私立中学校のほうが「学校給食費」が安い理由は、お弁当制度を採用している学校が多いからです。

体験活動や習い事などにかかる「学校外活動費」には、公立と私立の間で大きな差はありません。

なお調査によると、公立中学校の学習費は横ばいで推移していますが、私立中学校の学習費は増加傾向にあります。

私立中学向けの補助金・支援金に関しては、当ブログの「私立中学校生向けの補助金・支援金は?学費負担を軽減する方法」という記事に詳しく載っていますので、そちらも参照してください。

公立中高一貫校の3つのメリット

目標を射抜く

高校入試で途切れたり、指導方針が変わったりすることがない公立中高一貫校。そのため「ゆとり」のある、安定した学校生活を送りたい人にぴったりです。

ここでは、以下のとおり公立中高一貫校を選ぶ3つのメリットをご紹介します。

  • 中高一貫を前提とした特色ある教育を受けられる
  • 学費を安く抑えられる
  • 異年齢集団による活動や行事に参加できる

ではそれぞれのメリットについて見ていきましょう。

メリット1. 中高一貫を前提とした特色ある教育を受けられる

公立中高一貫校では、6年間にわたる一貫した軸をベースにした、特色のある教育を受けられる点がメリットです。そこで、次のような特色のある教育に取り組んでいる学校がありますので、参考にしてください。

  • 体験学習
  • 地域に関する学習
  • 国際化に対応する教育
  • 情報化に対応する教育
  • 環境に関する学習
  • 伝統文化などの継承のための教育
  • じっくり学びたい子どもたちの希望に応える

教師や学校側から見ると、6年間にわたり生徒を継続的に把握できるため、生徒一人ひとりの個性を伸ばしたり、かくれた才能をより発見しやすくなったりします。中高双方の免許を持っている教師も多いため、高等学校教員による乗り入れ授業も活発です。中学校で、専門性の高い授業に触れる機会もあり得ます。

2020年度からは新しい「学習指導要領」がスタートしました。中でも重視されているのが、未知の状況でも対応できる思考力・判断力・表現力の育成やアクティブラーニングです。

公立中高一貫校の中には、新しい学習指導要領が重視する教育を何年も前からいち早く取り入れている学校もあります。どのような特色のあるカリキュラムが提供されているのか、公式サイトなどをぜひチェックしてみてください。

メリット2. 学費を安く抑えられる

公立中高一貫校に通うメリットは、私立中学に通うより学費を抑えることができる点です。義務教育である前期課程(3年間)では、授業料自体はかかりません。しかし制服、給食費や教材費などの費用はかかるため、およその金額を把握しておくようにしましょう。

私立中学校に通うと、公立の場合の約7.7倍の学校教育費がかかります。公立中高一貫校なら、学費を安く抑えながら、特色のある教育を受けられるのがポイントです。

メリット3. 異年齢集団による活動や行事に参加できる 

公立中高一貫校に通うと、中学校1年生から高校3年生までの年齢の違う集団による活動に参加できるのがメリットです。異年齢交流により良い刺激を受け、社会性や豊かな人間性が身に付きます。

取り組みの事例は、次のとおりです。

  • 全学年一体となって文化祭や体育祭などの行事に取り組む
  • 全学年による縦割りグループを形成し、スポーツや合唱などで協力し合う
  • 1年生の宿泊研修に上級生も参加し、親睦を深める
  • 全学年でマラソン大会やウォーキング大会に取り組む
  • 生徒会組織を全6学年で構成する
  • 全学年で清掃などボランティア活動を実施する
  • 高校生対象の進路選択に関わる講演会などに中学生も参加させる
  • 全学年から希望者を募集し、海外研修に合同派遣

異年齢交流により、外の世界へと視野が広がる機会に恵まれやすいといえるでしょう。

【公立中高一貫校の適性検査解説はこちら】

公立中高一貫校の受験は、学力試験ではなく適性検査という試験によって入学者が選抜されます。適性検査の内容や必要な能力について、詳しく解説します。

文部科学省が説明する中高一貫教育導入の目的

土から芽が出る

中高一貫教育制度は、もともと私立を中心に広がりをみせていたことから文部科学省で導入が検討されてきました。その結果、スムーズに接続する6年間を見通した計画的・継続的なカリキュラムであれば、大きな教育効果を目指せるというメリットが注目されたのです。

そこで1999年4月に、文部科学省は次のような目的を掲げて中高一貫教育の導入に踏み切りました。

  • 心身の成長など変化が著しく多感な時期に、個々の能力や適性に応じた教育を進め、生徒のもつ個性や創造性を伸ばす
  • 中等教育を多様化・複線化し、生徒や保護者の選択肢を増やす

公立中高一貫校は、次のとおり3種類に大別できます。

  • 中等教育学校
  • 併設型
  • 連携型

上記の3つの形態はそれぞれ特色が異なるので、ニーズに合わせて志望校を選ぶようにしましょう。

実際に、公立中高一貫校は生徒や保護者から人気を集めており設置数も増加中です。

中高一貫教育の導入において、大学受験準備に特化したり受験競争の低年齢化をあおったりすることを目的としていません。そのため公立中等教育学校や併設型中学校では、入学試験で学力検査を実施しないようにしています。

しかしその後「ゆとり教育」が批判されるなど、学力重視の風潮が徐々に高まるといった変化が起きました。そして都立初の中高一貫教育校となる白鷗高校附属中学校が設置された2005年度ごろから、特に中等教育学校は進学重視になりつつあります。

一方、併設型高等学校では専門学科を設置したり、内進生が進学を前提としない学科を設置したりする場合があるのです。

連携型は、市町村の中学校と都道府県の高校が文字どおり連携するというものです。過疎地域などよく見られます。

教育方針ほか部活動や設備もチェックしよう

私立中学校に比べ、公立中高一貫校は学費を抑えられる上、それぞれの学校ごとに特色のある教育を受けられるなどメリットが多いことが分かりました。

充実した学校生活のためにも、ぜひこの機会に中学受験での学校選びの参考としてこの記事を役立ててください。

また、公立中高一貫校の受験は、学力試験ではなく適性検査という試験によって入学者が選抜されます。適性検査の内容や必要な能力について、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。