大学入試で学校推薦型選抜を選択する場合、早い段階から準備をして入試に備えておくことが大事です。学校推薦型選抜には公募制と指定校制の2つのタイプがあり、合格基準が異なります。また国公立大学と私立大学とでは出願条件や推薦人数の制限、選抜方法などが変わってきます。
今回は学校推薦型選抜の基本と受験対策に役立つ情報をご紹介します。
学校推薦型選抜の基本を押さえよう!
学校推薦型選抜とは、かつての推薦入試のことです。一般選抜との大きな違いは、出願条件、選考方法、実施時期です。学校推薦型選抜では高校在学中の成績や課外活動などが合否判定に大きく影響します。そのため学校推薦型選抜を選択する受験生は、なるべく早めに受験対策をする必要があります。
初めに学校推薦型選抜で知っておくべき基本について説明しましょう。
出願条件・選考方法・実施時期について
学校推薦型選抜の出願条件は主に3つです。
- 高校を卒業した者(見込みも含む)
- 高校卒業と同等の学力を認められる者
- 学校長の推薦がもらえる者
この中で特に重要なのが、高等学校長の推薦です。学校推薦型選抜では高校在学中の学業成績や課外活動などが合否判定に大きく影響するため、学校長の推薦を得られる者という条件が付いています。これは次の選考方法にも関連してきます。
学校推薦型選抜の選考方法では主に3つの実績が重要になります。
- 学業成績
- 課外活動の実績
- スポーツの実績
課外活動には文化活動、委員会活動、ボランティア活動、地域活動などが含まれます。また大学によって独自の選考基準(アドミッション・ポリシー=大学が求める学生像)が加わることもあるので、事前に調べて対策を立てておく必要があるでしょう。これらの実績を踏まえた上で、実際の選抜試験では次の5つの内容で審査が行われます。
- 書類審査
- 学科試験
- 小論文
- プレゼンテーション
- 面接
学科試験については大学によってない場合もあるので、事前にチェックしておく必要があるでしょう。具体的な審査内容については次の一覧表を参考にしてください。
書類審査 | 調査書(成績や生活態度など)、推薦書(先生が記入する推薦理由)、志望理由書(受験生が記入する志望動機)、自己推薦書、エントリーシートなど |
学科試験 | 大学によっては筆記試験がある |
小論文 | 与えられたテーマに沿って書くもの、または長文を読んでテーマについて書くもの テーマは専攻分野や時事問題までさまざま |
プレゼンテーション | 提出した志望理由書や自己推薦書などについて、口頭で発言を求められる |
面接 | 大学により個人面接、グループ面接がある 専攻分野についての口頭試問が行われることもある |
実技・作品提出 | 芸術系や体育系の大学で実施されることが多い |
試験の実施時期ですが、学校推薦型選抜は一般選抜よりも早くなるので要注意です。一般選抜が1月から3月頃なのに対し、学校推薦型選抜では11月から12月にかけて行われます。文部科学省の規定では、出願時期は11月以降、合格発表時期は12月以降となっています。
一般選抜 | 1月~3月 |
学校推薦型選抜 | 11月~12月 |
国公立大学と私立大学の学校推薦型選抜
国公立大学と私立大学の学校推薦型選抜について、共通点と相違点をご紹介します。
学校推薦型選抜における国公立大学と私立大学の共通点
学校推薦型選抜における国公立大学と私立大学の共通点は、どちらの場合も出身高校長の推薦が必要だということです。誰もが出願できるわけではなく、学業成績の評価基準が一定以上あること、〇浪まで、といった条件をクリアしなければならない点は同じです。
学校推薦型選抜における国公立大学と私立大学の相違点
異なる点は募集人数です。国公立大学は私立大学に比べて募集人数が少なく、学業成績の評価基準が厳しい傾向にあります。国公立大学の中には共通テストを評価基準に入れるところが増えており、それによって入試日程が変わってきます。また面接や小論文では、受験する学科に関連した専門的な知識を求める傾向が見られます。
また、私立大学では学校推薦型選抜での入学者が増えています。文部科学省の平成30年度の調査では私立大学入学者の41%が推薦入試(旧)、11.4%がAO入試(旧)となっており、新しい学校推薦型選抜になってからもこの傾向は続いています。
私立大学の学校推薦型選抜の特徴は、多様な選抜が行われていることです。「スポーツ推薦」や「課外活動」のほかにも、「有資格者推薦」などがあります。実用英語技能検定(英検)やケンブリッジ英語検定などの資格者や、日商簿記など一定の技能を有する受験生が優遇される選抜制度です。
国公立大学 | 私立大学 | |
募集人数 | 少ない | 多い |
出願条件 | 学業成績の評価基準が高い | 成績の評価基準がない場合もある |
選抜方法 | 共通テストを評価する場合もある | スポーツ推薦、有資格者推薦、課外活動推薦など |
国公立大学の医学部は「地域枠」推薦がある
国公立大学の医学部を目指す受験生は、地域枠の学校推薦型選抜を選ぶことができます。これは地域における深刻な医師不足を解消するための措置で、出身地域や卒業後の勤務地などに制限を設ける制度です。
平成31年度は37の国立大学、8つの公立大学で地域枠推薦の募集を行っています。私立でも25の医学部が地域推薦枠を設けています。
卒業後は特定の地域で医師として働くことが条件になりますが、それを踏まえた奨学金を受けられる場合もあります。将来、地域医療に携わりたいと考えている受験生には見逃せない推薦枠でしょう。
学校推薦型選抜には公募制と指定校制がある
学校推薦型選抜には「公募制」と「指定校制」の2つがあります。どちらも推薦型ですが推薦内容は大きく異なっており、出願時期や選考過程、合格率も違ってきます。受験生が選択しやすいように、両者の違いと特徴について説明します。
公募制と指定校制の違いとは?
一番大きな違いは、出願できる学校に制限があるかどうかです。
- 公募制:出願できる学校に制限がありません。大学の出願要件を満たし、高等学校長の推薦があれば、全国どこの高校からでも出願できます。
- 指定校制:大学の出願要件を満たし、高等学校長の推薦を得た上で、通っている高校が大学側に推薦校として指定されていなければなりません。
公募制の特徴
公募制は、「公募制一般選抜」と「公募制特別推薦選抜」の2つあるのが特徴です。
- 公募制一般選抜:募集定員が多く、主な評価基準は学校の成績です。選考方法は書類審査、小論文、学科試験がメインですが、面接やプレゼンテーションが行われることもあります。
- 公募制特別推薦選抜:「スポーツ」「文化活動」「委員会活動」「ボランティア活動」などが評価基準となり、定員枠が決まっていることが多いです。選考方法は書類審査、面接、実技などがメインです。
指定校制の特徴
指定校制の特徴は合格率が高いことです。ただし募集人数が少ないので、希望者が多い場合は校内選考が行われます。受験生にとっては狭き門ですが、校内選考が通って出願できれば合格率はかなり高いです。
指定校制を導入しているのは私立大学が多く、現役生や専願に限定されるのも大きな特徴です。
公募制 | 指定校制 | |
出願要件 | 校長の推薦があれば受験できる | 大学側が指定した高校の生徒のみ |
評価基準 | 主に学校の成績で評価 | スポーツや課外活動で評価 |
定員数 | 多い | 少ない |
出願時期 | 8月~10月に願書配布 | 7月~10月に校内選考 |
特徴 | 定員が多い | 合格率が高い |
公募制と指定校制に向いている人は?
公募制と指定校制の違いを踏まえた上で、どちらを選択したらいいか迷う方もいることでしょう。そこで、公募制と指定校制はどのような人に向いているのかについて説明しますので参考にしてください。
- 公募制に向いている人:高校の定期テストで各教科まんべんなく高得点を取っている。特別推薦選抜の場合は、スポーツや芸術分野で実績がある。
- 指定校制に向いている人:苦手教科がなく、総合的に高成績で校内選考を勝ち抜ける。日々の学校生活にも意欲的に取り組んでいる。
学校推薦型選抜で注意するポイント
学校推薦型選抜の基本的な事柄について説明してきましたが、最後に注意すべきポイントについても説明しておきます。
- 専願が基本:学校推薦型選抜では専願(1校だけ受験)が基本です。合格したら他の大学を受けることはできないので、受験する大学を慎重に選ぶ必要があります。
- 一般選抜も視野に入れて勉強:受験に絶対という言葉はありません。学校推薦型選抜でもしも不合格になった場合のことも考えて準備してください。12月になって急に一般選抜に切り替えても間に合いません。目標は学校推薦型選抜だとしても、一般選抜のための受験対策も平行して行う必要があります。
学校推薦型選抜の合格率に関しては、当ブログの「学校推薦型選抜の合格率はどれくらい?一般入試との違いをチェック」という記事に詳しく載っていますので、そちらも参照してください。
学校推薦型選抜は早めに目標を決めよう!
一般選抜は1月から3月が入試の時期ですが、学校推薦型選抜はそれよりも早めのスケジュールになります。公募制は8月から10月にかけて願書が配布され、指定校制は7月から10月にかけて校内選考が行われます。
学校推薦型選抜を選ぶのなら、高校3年間のスケジュールをできるだけ早期に組むことがポイントです。そのためには高1でオープンキャンパスに参加してある程度の志望校を決め、高2から高3にかけて小論文対策、英検対策、野外活動などに積極的に参加してください。
早めに目標を決め、3年間かけてコツコツと努力を積み重ねれば、きっと栄冠を勝ち取れるでしょう。