『高専』という選択肢!高校や専門学校とは何が違う?

中学卒業後の進路には普通高校、または工業高校、専門学校がありますが、もうひとつ忘れてならないのが高専(高等専門学校)です。

あまり知られていませんが、高専は専門技術者を養成するための学校で、5年間の一貫教育が行われています。重要な選択肢のひとつとして、高専についても抑えておくべきです。

今回は普通高校や工業高校、専門学校との違いだけでなく、高専のおもな特徴についてもご紹介します。

これだけは知っておきたい高専の特徴

射的で的を射抜く

高専は全国にありますが、数は限られています。また在校期間も普通高校より長くなっています。ここでは高専の基本的な特徴をはじめ、受験する場合の難易度や得られる資格、メリット・デメリットなどについてお伝えします。

高専には国立・公立・私立の3種類がある

高専は全国に57校あり、約6万人の学生が学んでいます。内訳は国立が51校、公立が3校、私立が3校です。国立高専の数が圧倒的に多いのは、それだけ国家が専門的な知識を養って優秀な人材を育成することに力を入れているからです。

令和2年度

 学校数学科数学級数入学定員在学生数
国立511842349,360(1,118)48,219(2,998)
公立3719720(76)3,617(183)
私立3610385(32)1,913(44)

上記表の()は専攻科の入学定員・在学生数です。

高専の入学資格は、一般の高校と同じです。全国で高専がないのは5県(埼玉県、山梨県、神奈川県、滋賀県、佐賀県)のみです。

国公立と私立は費用が違う

国公立と私立のおもな違いは学費です。国公立は入学金・授業料ともに一律で同じですが、私立は高専によって異なります。

国公立の場合、入学金は84,600円、年間授業料は234,600円。その他に学生会費、後援会費、教材費などがかかります。学生寮を利用する場合は寮費も必要です。

私立は全国で3校(サレジオ工業高等専門学校、国際高等専門学校、近畿大学工業高等専門学校)ですが、参考までにそのうちの2校についての費用をお伝えしておきます。

学校種別入学金(円)年間授業料(円)
国公立84,600234,600
国際高等専門学校200,0003,000,000(1、2年生の年額) 250,000(3年生) 1,600,000(4、5年生の年額)
近畿大学工業高等専門学校200,000520,000(1~3年生の年額) 1,084,000(4 ~5年生の年額)

上記表は近畿大学工業高等専門学校は2021年度です。国際高等専門学校の1、2年生授業料には寮費(食事付)が含まれます。

高専は5年間一貫教育である

高専は5年間の一貫教育です。普通高校や工業高校が3年間なのに比べると、2年間多く通学することになります。専門技術者を育てるにはそれだけの期間が必要ということです。

一般科目と専門科目がバランスよく配置されており、また実験と実習を重視した専門教育に重点が置かれています。

専門学科について

学校ごとに学科は異なりますが、大きく分けると「工業系」と「商船系」の2種類です。商船系の学科には商船学科がありますが、工業系の学科は多岐に渡ります。

そのほかにも高専によって独自の学科を設けているので、事前にチェックしてください。

工業系商船系その他
電気工学科、電子制御工学科、機械工学科、情報工学科、建築学科、環境都市工学科、物質工学科など商船学科経営情報学科、情報デザイン学科、コミュニケーション情報学科、国際流通学科など

高専で得られる資格とは?

高専を卒業すると、準学士の称号が得られます。これはかつて短大卒の学生に与えられていたものと同じです。

多くの高専には5年間の本科を卒業したあと、更に2年間の専攻科が設けられています。専攻科へ進めばより高度な技術教育を受けることができ、大学の学部と同じ学士の学位を得ることができます。

入試の難易度と偏差値

一般の高校でもそれぞれ偏差値が異なるように、高専にも偏差値の高いところと低いところがあります。とはいえ、高専の偏差値は一般の高校よりも高い傾向があります。

また高専は入学してからの方が大変といわれており、留年や中途退学する生徒が少なからずいるのも事実です。

高専へ進学する場合は偏差値も大切ですが、入学してから頑張れるかどうかが重要なポイントになることを意識しておく必要があります。

国立大学の3年次へ編入できる

すでに説明したように、高専で5年の本科を修了後には2年の専攻科に進むことができます。それ以外に、国公立大学の3年次に編入学できるという特徴があります。

大学3年次に編入するには編入試験に合格しなければなりませんが、少ない教科数で比較的簡単に国公立大学へ入れます。

例えば米子高専では全学生の3割程度がこの制度を利用して国公立大学へ編入しています。合格状況をみると、令和元年は87名、令和2年は64名、令和3年(※8月31日現在)は51名が編入しています。少数ですが、東京大学、京都大学、東北大学など難関といわれる大学への編入者もいます。

高専のメリット・デメリット

高専は専門技術者を養成するための学校です。将来その方面の仕事に就きたい人にはぴったりの選択肢ですが、デメリットもあります。ここでは高専のメリットとデメリットについて説明します。

高専に進学するメリットを下記の表にまとめました。

メリットメリットの詳細
校則が比較的自由高専は専門技術を学ぶ学校なので、スマートフォン、PC、タブレット、ゲーム機などを持ち込むことができます。髪を染めた生徒も多いです。高校より校則が緩いのは、19~20歳の生徒も在籍するためです。
就職率がほぼ100%高専を卒業した生徒は即戦力になるので、就職率はほぼ100%で、早い段階で就職が内定します。
長期休暇が長い一般の高校よりも夏休みの長期休暇が長く、1.5か月ぐらいあります。後期の授業開始が9月末の高専が多いです。
国公立大の3年次に編入可能編入試験がありますが、比較的簡単に国公立大学の3年次に編入可能です。
個性的な生徒が多い専門技術を学ぶのでプログラミングや数学、物理などに詳しい生徒がたくさんいます。さまざまな技術分野を得意とする生徒が多いです。

高専に進学するデメリットを下記の表にまとめました。

デメリットデメリットの詳細
進路変更が難しい専門技術者を養成する学校なので、入学してから自分に合ってないと気付いた時の進路変更が難しいです。
勉強が大変入学してからの勉強の進度が早かったり難易度が高かったり、留年や退学する生徒数が多いです。
周囲に流されやすい個性的な生徒が多いために、環境に流されると勉強が手につかなくなる場合もあります。自分の意思を強く持つ必要があります。
寮生活が必要なことがある国公立と私立を合わせて57校の高専がありますが、高専のない地域が5県あります。そのため、自宅から通えない場合は併設されている寮生活をしなくてはなりません。

高専受験において「試験まで時間が無い」「志望校の傾向に合った対策をしたい」「塾に通わず自宅学習で合格を目指したい」というお客様のお声から、「志望校別・高専受験合格レベル問題集」が作られました。願書・面接対策ワークもオプションで付けられ、人物試験に自信がないと、8割のお客様がご活用くださっています。最頻出問題を押さえた問題集と音声解説のセットなど充実のコンテンツで93.5%のお客様から、満足のお声を頂いております。ぜひご活用ください。

 高専・高校・専門学校の違いとは?

授業を受ける学生

中学卒業後の進路には高専のほかに普通高校、工業高校、専門学校があります。ここでは高専との比較において、それぞれの違いについて説明します。

高専と高校の違い

高専と高校を比較して一番わかりやすい違いは、通学年数です。高専が5年なのに対し、普通高校は3年間で卒業です。

その次に特徴的な違いは授業内容です。高専は技術系や商船系など専門分野のカリキュラムがありますが、高校は日本史や現代国語などの基本科目がメインです。

文部科学省によると、高専は高等教育機関、高校は中等教育機関という位置づけです。高専を卒業するとかつての短大と同じく準学士の資格が付与されますが、高校卒業では特別な資格は得られません。

大学進学を目指す生徒の多くは、高校で勉強して入学試験に備えます。高専の場合は5年終了後に国公立大学の3年次に編入という道があります。

区分高専高校
教育水準高等教育中等教育
入学資格中学卒業中学卒業
修業年限5年3年
教育目的専門技術・職業能力の養成普通教育と専門教育
授業内容工業系や商船系など専門内容普通科目と専門科目
資格(称号)準学士なし
大学入学編入学可能進学可能

高専と工業高校は何が違う?

高校には普通高校のほかに工業高校があります。専門的な知識や技術を身につけるための高校ですが、高専とは何が違うのでしょうか。

工業高校は普通高校と同じく修業年限が3年間です。偏差値は高専よりも低めで、大学進学よりも卒業後にすぐ就職する生徒がたくさんいます。高専よりも2年間早く就職できるので、卒業後にすぐ働きたい生徒に向いています。

また、将来は工業系の仕事に就きたいが明確に決め切れていない場合は高専より工業高校の方が向いています。高専は進路変更が難しいですが、工業高校なら文系への変更がやりやすいです。

高専と専門学校の違い

一般的に知られている専門学校は高専(高等専門学校)と名前が似ていますが、正確には専修学校専門課程(専門学校)といいます。高専との大きな違いは、専門(専修)学校の入学資格は高校を卒業した者であるという点です。

中学卒業後に入学できる専門学校は正確には「各種学校」といいます。和洋裁、珠算、自動車整備、簿記、調理・栄養、看護師、保健師、理容・美容、英会話、工業、タイプなど各種の知識や技術を習得するための教育施設です。

高校進学や大学進学を目指すよりも、社会に出た時の就職に役立つ専門技術を身につけるのが目的で、基本的に入学資格はありません。

高専生の卒業後の進路・就職に関しては、当ブログの「高専生の卒業後の進路・就職は?将来から逆算して高専を選ぼう」という記事に詳しく載っていますので、そちらも参照してください。

高専から大学編入を狙うという進路もある

高専の特徴をはじめ、高校や工業高校、専門学校との違いについて説明してきました。一番大きな違いは5年制であるということ、専門技術者の養成を目的としているということです。

技術者の道を目指す人には高専が向いています。社会に出て即戦力として働けますし、修業後に国公立大学の3年次に編入できるというのも魅力でしょう。専門技術を極めたい人は、高専から大学編入というコースも視野に入れて挑戦してみてはいかがでしょうか。