高専生の卒業後の進路・就職は?将来から逆算して高専を選ぼう

あなたの将来の夢は? 高専を視野に入れてみよう

高専の卒業後は就職と進学に分かれます。高専は求人倍率が高く、就職支援担当の教員がサポートを行うこともあり、就職率は100%。将来就きたい職種や入りたい企業がある中学生にはおすすめの学校です。

今回は高専卒業後の進路についてご紹介します。就職状況をはじめ、専攻科への進学や大学編入についてもまとめていますので、ぜひ読んでみてください。

高専とはどんな学校?

ガラス張りの外がよく見える教室

高専とは「高等専門学校」といって、実践的・創造的技術者を養成することが目的の高等教育機関で、全国に国公立・私立を合わせて計57校あります。(令和4年1月31日時点)高専とはどのような学校なのか、特色について解説します。

5年間の一貫教育

高専は中学校を卒業後に入学することが可能です。5年一貫制となっており、一般科目と専門的な知識を深めるための専門科目が学べます。15歳で入学後、大学と同程度の高等教育を受けられるため、入学するにはそれなりの学力が必要です。最終学年となる5年次には高専生活で培った学びをもとに、卒業論文をまとめます。

3年生を修了すると高等学校の卒業程度の資格を得ますが、「高卒」の資格が得られるわけではありません。5年間の本科を卒業後、さらに専門分野を深く学びたい場合は2年間の専攻科へ進学することが可能です。

実践的な教育と優れた研究設備

高専は高等教育機関として、高いレベルの実験や実習など実践的な教育が受けられるように、研究設備が整っています。また、国立高専には企業が抱える技術的課題を解決するために、約4千人の教育や産学コーディネーターなどが対応する技術相談や共同研究、受託研究制度を設けています。

制度名制度詳細
技術相談制度専門分野に応じた教員が企業や自治体などが抱える技術的問題の相談を受ける制度
共同研究制度高専の研究施設で民間の研究者と共同研究を行って、研究成果を上げる制度
受託研究制度民間企業等から委託された研究を高専の研究者が研究して、研究開発に協力する制度

身につけた知識と技術を発表できる機会が豊富

高専では授業や課外活動で習得した知識や技術を発表できる場として、全国規模のコンテストを開催しています。

  • ロボコン(全国高等専門学校ロボットコンテスト)
  • プロコン(全国高等専門学校プログラミングコンテスト)
  • デザコン(全国高等専門学校デザインコンペティション)
  • 英語プレコン(全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテスト)
  • 防災コン(高専防災コンテスト 地域防災力チャレンジ)
  • DCON(全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト)
  • 体育大会(全国高等専門学校体育大会)

コンテストに出場することで、互いに協力しあえるコミュニケーション力が養われるだけではなく、出場に関する資料作成や計画性などさまざまな力が身につきます。進学や就職活動において、学生生活におけるこうした活動は企業からも評価されるポイントです。豊かな学生生活を送るためにも、ぜひ参加を目指しましょう。

卒業生の就職率や求人倍率が高い

高専は5年間の本科を卒業後、より幅広い視野を持った技術者を育成するため、2年間の専攻科が設けられています。専攻科の修了生で大学評価・学位授与機構の定めた条件を満たしている場合、「学士」の学位が取得可能です。さらに学びを深めたい方は大学院へ進学もできます。

国立高専では国際的に活躍できる技術者を育成するために、JABEE(日本技術者教育認定機構)認定プログラムに取り組んでいます。他にも「Society5.0型未来技術人財」育成事業や「サイバーセキュリティ人材育成事業(K-SEC)」などに積極的に取り組んでいます。

卒業生の就職率や求人倍率が高い

高専生は大学同程度の高等教育を受けられるため、卒業生は多くの企業から求められます。高専卒業生の求人倍率は約20〜30倍と高く、国立高専では卒業年度の10月時点の内定率が90%、卒業生の平均就職率がほぼ100%です。

大卒者の求人倍率は景気に左右されるところがあり、2021年卒の大卒求人倍率は1.53倍、2022年卒は1.50倍です。そのなかで、高専は求人倍率や就職率は毎年安定しており、高い実績を維持しています。

高専では就職支援を行っており、就職担当教員が豊富な求人情報をもとにサポートを行っています。希望する企業に就職できる可能性が高いことから、入社したい企業や希望する職種に就ける可能性が高いといえるでしょう。

高校や専門学校違いは、当ブログの「『高専』という選択肢!高校や専門学校とは何が違う?」という記事に詳しく載っていますので、そちらも参照してください。

高専の卒業後の進路

3つの選択肢に迷う人

高専卒業後の進路は進学と就職に分かれます。本科卒業者は約60%の生徒が就職し、約40%が専攻科や大学編入など進学をしています。専攻科修了者も約60%が就職、約40%が大学院へ入学しています。

編入学先の大学でもっとも多く高専卒業生を受け入れているのは、高専と連携している豊橋技術科学大学と長岡技術科学大学です。多くの学生が高専の卒業生で、実践的で創造的な技術者として活躍するための技術と知識を身につけることが可能です。

高専では各校の公式ホームページで卒業生の進路情報を公開しています。本科卒業生・専攻科修了生の進路状況を確認してみましょう。


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高専卒業後に進学する場合

授業を受ける学生

高専卒業後に進学する場合、専攻科へ進学または新たに大学受験に挑む方法があります。くわしく解説しましょう。

高専の本科卒業後に専攻科へ進学

高専卒業後、より専門知識を深めるために専攻科へ入学する生徒もいます。専攻科は2年間で修了となり、卒業するとちょうど4年生大学の学生と同じ年齢です。本科卒業時点で大学の工学部の高いレベルの学びを習得しており、実験や実習なども豊富に経験しています。

ここからさらに専門知識を学べる専攻科へ進学することで、専攻科修了後にはさらに深い知識を身につけることが可能です。専攻科を修了した際は、「学士(工学)」の称号を得ることができます。

大学編入・入学を目指すなら受験対策は必須

大学へ入学するには、高校卒業相当の資格が必要です。大学受験を目指すタイミングは3年生修了時と5年生の本科修了時です。高専では理数系の分野を勉強します。大学の入学者選抜で実施される「大学入学共通テスト」には、受験資格として以下の3つの条件を提示しています。

  • 高等学校卒業程度認定試験に合格した方
  • 高等学校卒業艇庫認定試験に合格見込みの方
  • 令和2年度第2回高等学校卒業程度認定試験出願者

これらの条件を満たせるのは、本科3年生修了時、または本科修了時です。高専では理系科目を中心に学びます。そのため、大学入学共通テスト対策として文系科目について学ぶなど受験対策が必要です。事前に志望大学の募集要項を確認しておきましょう。

大学を受験して不合格となった場合、最終学歴は「高卒」です。本人の意思によっては浪人をして受験に挑むことも可能ですが、モチベーションにも影響するため強い意志が必要です。

通信制大学へ編入・入学する方法もある

国内には通信制大学・学部が44校、通信制短期大学が11校、大学院は修士・博士課程含めて37校あります(令和4年1月31日時点)。大学によっては3年次編入学を受け付けていないところもあるので、事前に確認しておきましょう。スクリーニング(通学)が必要なところや、eラーニングのみで単位を得られるなど、授業のバリエーションが豊富な大学もあります。

通信制大学は在学中の成績表などの書類や課題を用いて選抜を行います。そのため、よほどのことがなければ不合格となる可能性はありません。きちんと学べば免許状や資格などの取得を目指せます。基本的に自宅学習なので1人でもしっかりと学べる意思の強さと、生活リズムなど環境づくりが大切です。

高専卒業後の就職率は100%

胴上げで合格を祝福される男の子

高専の卒業生は求人件数が多く、ほぼ100%就職が可能です。仕事に必要な専門知識を身につけているため、高専卒業生に対する企業評価は高く、求められる人材です。そのため1人あたりの求人倍率も高く、就活に困ることはないでしょう。

本科修了後で短大卒、専攻科修了後で4年生大学卒業と同等の給与体系が適用されます。ただし、企業によっては高専卒枠と大卒枠を分けているところもあり、給与面や昇給面が大卒者とは異なることもあります。

卒業後に就職したい企業の給与体系などを調べて、就職か進学のどちらにするのか進路を明確にしておくことでしっかり対策することが可能です。

高専卒業後に就職している業界・職種

高専の卒業生のほとんどは専門的・技術的職業従事者となり活躍してます。関心のある分野・学科から目指せる主な職種をまとめてみたので参考にしてください。

分野主な学科主な職種
機械系・材料系機械工学科・機械システム工学科・機械電気工学科など自動車やロボットなどのエンジニア 生産システムの設計・維持管理など
電気・電子系電子制御工学科・電気情報工学科・電気工学科などソフトウェア開発 電気電子機器・情報関連機器の製造など
情報系情報工学科・電子情報工学科・制御情報工学科などIT業界でシステムエンジニア IT業界でネットワークエンジニアなど
化学系、生物系物質工学科・生物応用化学科・物質化学工学科など研究・開発を支えるエンジニア・サイエンティスト
建設系、建築系環境都市工学科、建築学科、都市システム学科など災害時の被害予測・ハザードマップ作成 都市交通の調査・計画・設計など

高専は学区制ではないので地元以外の高専の受験も可能です。気になる高専の公式ホームページから卒業生の進路を確認してみましょう。

高専卒業後に就職した場合の収入

高専は求人倍率や就職率が高く、希望の職種に就ける可能性も高くなりますが、給与面が気になる方もいるでしょう。厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況」をもとに、学歴別の初任給をまとめてみました。

学歴初任給
大学院修士課程修了約23万9,000円
大学卒約21万円
高専・短大卒約18万4,000円
高校卒約16万7,000円

専攻科を修了しても「高専卒」の給与が必ずしも適用されるわけではありません。企業によっては高専生の持つ技術を高く評価し、大卒同等の給与が適用されるところもありますが、業界によって差が大きく、高専卒給与を大卒並みにという要望も出されています。就きたい職種や企業の給与体系を確認して、高専卒業後の進路を検討しましょう。

高専は卒業後の就職先で役立つスキルが身につく

高専では普通高校から大学進学では、体験できない授業を受けられるため、大卒から就職するよりも仕事に関する専門知識を身につけることが可能です。卒業後の求人倍率も高く、就職率はほぼ100%と高いことから就活に悩むこともありません。

ただし、企業によっては高専卒よりも大卒を重視するところもあるので、進学も視野に入れて5年間しっかりと学ぶことが大切です。