中学受験といえば「私立中学校」という時代がありましたが、今は公立中高一貫校の設置数も増え、お子様の進学先として公立中高一貫校が大きな注目を浴びています。「中高一貫」という響きに、なんだかお得感を感じる方も多いと思いますが、実際のところ、その具体的なメリットは、意外と知られていません。
そこで、当記事では、公立中高一貫校という学校形式の概要や制度が作られた目的、公立中高一貫校に進学するメリット、デメリットを解説します。メリット、デメリット両方を知ることで、お子様の性格や個性に合った学校選びにつなげてください。
中高一貫校とは?
中高一貫校とは、中学校~高校の6年間の中等教育を、一貫したカリキュラムで学べる学校のこと。1999年の学校教育法改正によって生まれた形式です。文部科学省は次のような目的から、中高一貫教育を推し進めています。
- 生徒や保護者の選択の幅を広げること
- 学校設置者による特色ある教育のための創意工夫を推進すること
- 生徒の個性や創造性を重視した教育の実現を目指すこと
現在、中高一貫校には次の3方式があります。
- 中等教育学校:中学校~高校の6年間、同じ学校で学ぶ方式
- 併設型:設置者を同じくする中学校と高校を接続する方式。多くは、同敷地内に中学校と高校が隣接されている。高校進学時は無試験
- 連携型:中学校と高校が、カリキュラム編成や教員・生徒間の交流といった連携をとる方式。設置者が異なる中学校と高校でも実施可能
公立中高一貫校の6つのメリット
公立中高一貫校に進学すると、次のようなメリットがあります。
- 学費が比較的安い
- 個性のあるカリキュラム
- 中高生活にゆとりがもてる
- 環境の変化が少ない
- 学力レベルが揃っている
- 前倒しで学習を進められる
それぞれのメリットを詳しくみていきましょう。
1.学費が比較的安い
私立と比べて学費が安いことは、公立中高一貫校のメリットのひとつです。公立の中高一貫校の場合、義務教育にあたる中等教育学校の前期課程の授業料は無償、後期課程も公立高校と同様に無償です。そのぶん、私立よりもトータルの授業料が大幅に安くなります。
また、私立の場合は高額な入学金や施設費、寄付金などもかかるケースが多く、場合によっては6年間で公立中高一貫校の倍以上の費用が必要となります。中高一貫校に進学したいけれど家計の面で不安がある、という場合は、公立中高一貫校を目指すことを選択肢に入れるとよいでしょう。
2.個性のあるカリキュラム
公立中高一貫校は、各学校が独自の教育方針のもと、個性的なカリキュラムを組んでいます。そのため、単なる詰め込み教育ではなく、個性や能力を伸ばせる教育を受けられる学校が多い点は、大きな魅力です。
6年間という長いスパンで計画が組まれているため、ある分野に特化した学習や本質的な教育を、腰を据えて受けることができます。
3.中高生活にゆとりがもてる
公立中高一貫校の多くは、高校進学時の入学試験がありません。そのため3年次になっても受験勉強に集中する必要がなく、時間的にも精神的にも比較的ゆとりを持って中高生活を送れます。高校受験の重圧を感じたくないという生徒にとっては、過ごしやすい環境だといえそうです。
また、部活動や習い事などの校外活動など勉強のほかに打ち込みたいことがある人も、6年間を通じて、集中して取り組みやすいでしょう。
4.環境の変化が少ない
公立中高一貫校は中学~高校を通じて同級生の顔ぶれがほとんど変わらず、中高の校舎が同じ敷地内にある学校もあるなど、6年間を通じた環境の変化が少ないのが特徴です。中学校から高校に進学する際にガラッと変わる環境に馴れるストレスがなく、精神的な負担は比較的少なくて済むでしょう。
人間関係を一から作るのが苦手な子や、新しい環境に馴染むのに時間がかかる子にとっては、6年間変わらない環境のなかで過ごせる点は、大きなメリットだといえるのではないでしょうか。
5.学力レベルが揃っている
公立中高一貫校は、入学者選別の学科試験はありません。しかし、総合的な思考力や応用力をみるための適性検査の結果や小学校からの報告書の評点などをもとに、学校ごとの基準をクリアした生徒のみが入学できる仕組みがあります。そのため、同じ考査を通過した生徒同士、学力レベルが近い集まりになります。専門学科タイプの中高一貫校の場合は、生徒の目的意識も共通しているため、目標に向かってお互いに高め合うことができるでしょう。
また、荒れがちなケースもある公立中学校と比べると、クラスの雰囲気も良い傾向にあるようです。高いレベルのなかで、落ち着いて学習に取り組みたい生徒にも向いているでしょう。大学進学にも意欲的な家庭が多く、学校からの大学進学指導にも期待できます。
6.前倒しで学習を進められる
公立中高一貫校では、高校の指導内容を中学校に前倒しで移行することが認められています。そのため、高校英語や高校数学などの内容の一部を中学校に導入することが、よく行われています。
一般的な公立中学校から高校に進学すると、突然質も量も増える学習内容についていけなくなる生徒が少なくありません。しかし中高一貫校では学習内容を無理なく前倒しすることで、中高のギャップをあまり感じずに学習を進められます。
また、前倒しした分の指導内容は高校で再び指導しなくてよいことになっているため、前倒ししたぶん時間の余裕も生じます。余裕ができた時間は学校独自に設定した教科にあてたり、より丁寧な指導に割いたりできるため、高校時も充実した学習内容が期待できるでしょう。
公立中高一貫校の2つのデメリット
公立中高一貫校には多くのメリットがありますが、デメリットが全くないわけではありません。デメリットもしっかり理解したうえで、進学先に公立中高一貫校を選んでも問題ないかどうかを検討する必要があります。
主なデメリットは、次の2つです。
1.中だるみしやすい
2.環境がリセットしづらい
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.中だるみしやすい
中高一貫校のデメリットの1つが、中だるみしやすいことです。公立中高一貫校の多くは、高校受験という大きな節目がありません。そのため、学習に対する緊張感がなくなり、いわゆる「中だるみ」状態に陥りやすいのです。
中だるみ期間が長いと、入学時の目標を達成できなくなるだけでなく、勉強についていけなくなり、大学進学にも悪影響が出る恐れがあります。高校受験がないシステムは公立中高一貫校のメリットでもありますが、意欲を欠かさずに学習に取り組めなければデメリットに転じることに注意が必要です。
2.環境がリセットしづらい
6年間環境の変化がほとんどない、という点がデメリットになる場合もあります。
入学した学校の環境が自分に合えば、長期間落ち着いて学習や部活動に取り組めるよい状態で過ごせるでしょう。しかし、教師と相性がよくない、友人との間にトラブルが生じたといったことがあっても、中高一貫校だと簡単には環境を変えられません。そのため、苦しい環境のまま6年間を過ごさざるを得ないという可能性があるのです。
公立中高一貫校はメリットが多いがデメリットもある
お子様の将来を決める中学受験、悩みが尽きないと思います。多くのメリットがある公立中高一貫校にもデメリットはあります。どのような選択肢にもメリット・デメリットがあるのは事実です。
複数の選択肢の中から、メリット・デメリットを比較し、お子様の将来のため後悔のない選択ができるといいですね。
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