中学受験は国立中学のみで我が子は大丈夫?私立併願も検討しよう

中学受験費用、国立・公立・ 私立の違いは?助成金も紹介

お子さんの中学受験を検討している親御さんの中には「私立中学校の学費は高いから」といったご家庭の経済的な事情で、国立中学校1本を狙おうとしている人もいらっしゃることでしょう。

小学校から国立大学の付属小学校に通っている人は、内部進学で中学に進学できるため、国立だけしか受験しない人もいるかもしれませんが、中学からの受験の場合、国立だけというのはリスクが高いです。一世一代の試験ですから、子どもには成功体験をさせてあげたいですよね。

そこで今回は中学受験にかかる費用の概算や入学試験を実施する国公私立中学校の違いを解説します。最後まで記事を読めば、賢い受験校選びができるようになります。

中学受験にかかるトータル費用は?

黒板がある教室

小学3年生からスタートする人が多いといわれる中学受験の準備。学力検査のある国立中学校や私立中学校受験を目指すなら、遅くても小学校4年生の夏には準備を始めたいですね。

ここでは特に国立中学校と公立中高一貫校のみを目指した場合の中学受験費用を、次の4項目をもとに、準備を始めた時期に分けて概算します。

  • 通塾費用
  • 通信講座
  • 参考書購入(過去問や対策問題集)
  • 中学受験料

ではそれぞれについて見ていきましょう。

小学4年生の夏から準備を始めたときの中学受験費用

小学4年生の夏(7月)から通塾と通信講座を始め、受験月は2月。1月まで受験準備をしたと想定して計算しました。

項目費用概算
通塾費用        40,000円×9か月=360,000円(7月〜翌3月) 40,000円×12か月=480,000円 40,000円×10か月=400,000円(4月〜翌1月) 夏期講習:50,000円×3回(年)=150,000円 冬期講習:50,000円×3回(年)=150,000円
通信講座4500円×31か月=139,500円
参考書購入15,000円
中学受験料公立中高一貫校:2,200円 国立中学校:5,000円
合計1,701,700円

小学5年生の春から準備を始めたときの中学受験費用

2年弱、中学受験準備をした場合を見ていきましょう。

項目        費用概算
通塾費用40,000円×12か月=480,000円 40,000円×10か月=400,000円(4月〜翌1月) 夏期講習:50,000円×2回(年)=100,000円 冬期講習:50,000円×2回(年)=100,000円
通信講座4500円×22か月=99,000円
参考書購入15,000円
中学受験料公立中高一貫校:2,200円 国立中学校:5,000円
合計1,201,200円

約120万円の費用がかかります。

小学6年生の春から準備を始めたときの中学受験費用

小学6年生の春から受験月直前の1月まで、中学受験準備をした場合を見ていきましょう。

項目      費用概算
通塾費用40,000円×10か月=400,000円(4月〜翌1月) 夏期講習:50,000円×1回(年)=50,000円 冬期講習:50,000円×1回(年)=50,000円
通信講座4500円×10か月=45,000円
参考書購入15,000円
中学受験料公立中高一貫校:2,200円 国立中学校:5,000円
合計567,200円

約57万円の費用がかかります。

国立/公立と私立の違い

天秤で重さを比較

将来迎える大学進学に向けてしっかり準備をしたい…などの理由で、中学受験を考えている小学生と親にとって気になる志望校選び。

中学受験の志望校は、次の3種類のカテゴリーから選びます。

  • 国立中学校
  • 公立中高一貫校(中等教育学校、併設型、連携型の3つの形態あり)
  • 私立中学校

国立/公立と私立の違いは、大きく次の2点です。

  • 学習にかかる費用
  • 入学試験

それぞれの特徴を、以下のとおり表にまとめました。

 入学試験入学金授業料
国立
公立
公立 
中高一貫校

(調査書および学力試験以外の方法で選考)
無(原則)
私立

基本的に国立/公立の場合には、中学は義務教育過程にあたるので授業料の徴収もなく、教科書の配布も無償です。ただし「学習教育費」「学校給食費」「学校外活動費」といった学習費はかかることを覚えておきましょう。

私立中学校の場合には高額な入学金や授業料のほか、任意ですが寄付金などもかかります。施設維持費なども徴収される場合があるので、さまざまな出費が多いことを想定しておくことが大切です。

私立中学校の入学試験は、出題範囲が広いため試験対策が必要になります。

文科省が1999年に導入した公立中高一貫教育は、受験エリート校を作るための施策ではなく、「教育の多様化」を目的としています。そこで学校教育法施行規則によって、公立中等教育学校および併設型中学校では学力検査を実施していません。学力検査の代わりに適性検査などが実施されます。

国立中学校の入試は、各校によって選考方法はまちまちです。筑波大学附属駒場中学校では、第1試験が抽選からスタートするなどユニークな選考方法を採用しています。公立中高一貫教育の場合と比べると、学力検査に向けた受験対策が必要です。

経済的な負担が大きいのなら助成金制度を利用しよう

子どもが中学受験に乗り気でも、教育費を捻出する親の立場で考えると経済的な負担が気になりますよね。私立中学校は、授業料だけでなくイベントや海外への修学旅行などに費用がかさむからです。

ここでは学費をサポートする助成金制度を、以下の2種類ご紹介します。

  • 私立小中学校等就学支援実証事業費補助金
  • 各中学校独自の奨学金制度や特待生制度

ではそれぞれについて見ていきましょう。

私立小中学校等就学支援実証事業費補助金

平成29年度~令和3年度のみの期間限定実証事業として、文科省は私立小学校・中学校に通う生徒の学費を補助する補助金制度を実施しています。

補助金の対象は、次のとおりです。

  • 7月1日現在、私立小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程、特別支援学校(小学部、中学部)に通っている生徒
  • 世帯年収400万円以内かつ資産保有額600万円以内
  • 文部科学省が実施する調査への協力

最大で年額10万円を当該私立学校が代理受領し、結果的に授業料が減額される仕組みです。

各中学校独自の奨学金制度や特待生制度

各中学校は独自の奨学金制度や特待生制度を設けています。経済的に困窮し学費の納付が困難になった生徒を支援したり、入学試験や在学中の試験において成績優秀な生徒のみ授業料を免除したりして勉学を奨励する制度です。

特待生に選ばれると、入学金や授業料まで免除される場合があるので、ぜひチェックしてみてください。なお特待生制度を、中学校によっては奨学金制度としている場合もあります。

地元の公立中学校には進学せず、よりよい環境で学び、将来は難関大学への進学を目指したいという高いモチベーションがある人は、積極的に特待生を受け入れている中学校を選んでみてはいかがでしょう。

国立/公立中学だけを受験するのは危険?

先頭を走る紙飛行機

国立中学校は学費を抑えつつ、大学の研究から生まれた先進的な教育を受けられるとあって人気です。生徒の個性や創造性を伸ばすことを目的とした公立中高一貫校では、手頃な学費で学べるうえ、大学進学でも成果をあげていることから倍率が非常に高くなる傾向にあります。

クラス数が少ないため、国立中学校と公立中高一貫校の受験では定員数が少ない場合が多く、非常に狭き門といえるでしょう。国立中学校には、内部進学組も存在します。公立中高一貫校の出題傾向は一定せず、合格率は20%程度といわれるほど低いのです。

国立中学校と公立中高一貫校のみの受験を希望する場合に考えたいのは、「落ちたときの覚悟」ができるかどうか。受験準備のため、多額の費用をかけて塾に通ったのに、落ちれば12歳の子どもにとっては居たたまれない気持ちや辛い経験になることもあり、覚悟は難しいといえます。

そこで国立中学校と公立中高一貫校のみに絞るのではなく、進学はしなくても私立中学校を併願受験して成功体験を積むことも検討しましょう。実際に、中学受験の現場では、私立と併願するときは「753」と呼ばれる計画を立てることも多いのです。これは「7校出願」「5校受験」「3校合格」という意味で、子どもにチャレンジの場を与えることに繋がります。

逆にいえば、国立中学校と公立中学校のみの受験は控えたほうがよいかもしれません。

受験者数の多い中学では抽選(くじ引き)があるってホント?

勝利が印刷された木のパネル

復活する日が来るかもしれませんが、2021年8月現在、中学受験において抽選はほぼ実施されていません。

国立中学校の受験では、長く「抽選」が実施されていました。これは義務教育過程の「国立」中学校においては、成績のみで選抜するのは適当でないという理由によるものです。

第1次試験の学力検査の後に第2次試験として抽選が実施されるケースが多かったのですが、近年ではほとんどの国立中学校が実施を見合わせています。

愛知教育大学附属名古屋中学校では令和4年度より、抽選は実施されないことになりました。

筑波大学附属駒場中学校は第1試験に抽選を採用している珍しいケースですが、形式的な手続きとしてのみで、ここ数年は実施されていません。「抽選で選ぶ者の数は、募集人員の約8倍」としており、受験者数を絞る目的もかつてあったようです。

抽選方法とは、受験生自らがクジ引きするというものでした。受験要項にも記載されているとはいえ、12歳の受験生に与える心理的ダメージが大きいと賛否の分かれる選抜方法だったのです。

子どもの個性に合わせた志望校選びをしよう

従来の私立や国立に加えて、最近では公立中高一貫校という選択肢もあります。学費を抑えながら一歩先を行く教育を受けられる国立中学校、中高一貫して教育を受けることで個性や創造性を伸ばす公立中高一貫校、独自の教育方針を打ち出す私立中学校。子どもの個性に合わせた学校選びができるといいですね。

国立中学の受験勉強をスタートする心の準備が整った方は、以下の記事がおすすめです。国立中学校を選ぶ理由について、効果的な受験対策について具体的に解説しています。記事を読んで早めに目標を立てましょう。